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光の玉
私が10歳の時の話です。私は寝付きの悪い子供で、眠れずに深夜になってしまうことがよくありました。そんな眠れない時に「なにか」が来てしまうことは時々あって、不思議と予兆でわかるのでした。その日も眠れずに、ベッドの中でじっとしていました。すると「なにか」が来る前特有の、じっとりとした気配がし出したので、私は気味が悪くなって時計を見たんです。午前3時でした。何かがヒリヒリと息を殺しているような空気感が続いた後、ふいに静かな音がし出しました。耳鳴りのような、でももっと不安定で、弱々しい笛のような音です。かなり長い時間、その音の中で息を潜めていました。すると突然、部屋がパッと明るくなったのです。部屋の天井をおびただしい数の光の玉が飛び交っていました。玉の大きさは30cmくらい、右へ左へ、あらゆる方向に不規則に飛び交っていました。真夜中の、真っ暗な部屋の中が夕方のように明るくなって、とても美しかったです。だけど私は恐ろしくて、身じろぎ一つできませんでした。かなり長い時間経って、光の玉は消え、部屋はまた暗闇に戻りました。どのくらい時間が経ったんだろう。私は強張った身体を奮い立たせて時計を見ました。午前3時でした。 – TOMIYASU Yuma 冨安由真 “more..”
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ヒト
昔々、ヒトという生き物がいました。 ヒトには言語が生まれ、他のヒトを叩いたり噂することばかりに時間を費やすようになると、言語がヒトを分けてしまいました。 自由を求めるヒトはいつしか自由を憎み、地獄の淵にいるヒトを対岸にいるヒトが描いて、どちらの絵が残酷かを競いました。 そして絵を描き変えるうちに記憶を失い、印象だけで判断するようになりました。 重力のせいでヒトは低い方へと流れて溜まり、バカのふりをするうちに本当にバカになりました。 ヒトはあらゆるものを測って誰がたくさん持っているか比べ、持っているヒトは、減らないようにもっとたくさん持とうとしました。 持っていないヒトは「安い安い」という声に急かされ、どちらが安いかばかり比べていました。 ヒトは良いことをする前に悪いことをやめようしませんでした。悪いことはいつも誰かのせいだと信じて、ヒトは自分に期待するのを忘れ、席に座るためにいつまでも立って待っていました。 そして歴史の本を1ページめくると、ヒトはもういませんでした。 – MITAMURA Midori 三田村光土里 “more..”